こみなと日記

2023年-2025年 フランス大学院留学

渡仏17周目 ブリュッセルで年越し

12月25日〜31日

先週に週の前半は引き続き39℃台の熱が下がらなかった。24日、25日はノエルのため病院はやっていない。26日に友人に紹介してもらったGéneralisteに行く。処方箋をもらい、4種類の薬とインフルとコロナの検査を受ける。検査は陰性。

薬が効いたのか週の中盤には熱が下がる。ただ咳が治っておらず、年末年始に一緒に過ごす予定の友人に断りの連絡をいれる。「そっか早く良くなってね。次の機会に一緒に過ごそう」という返答を予想したが、返事は真逆だった。「咳ぐらいだったら、全然気にしない。それよりも年末年始を一人で過ごすことのほうが心配」と言われる。友人の言葉に甘え、ベルギーのブリュッセルに向かう。

Manneken Pis、しょんべん小僧をみる。クリスマスの装飾に彩られていた。

EU本部に行く。昔、教科書で見た建物通りだった。友人は以前ここで働いていたらしい。10代後半や20代前半の根拠のない野心に燃えていた時だったら、もっと感動してさらに野心を燃やしたのかもしれない。今は肌感覚がない世界には興味が薄れている。地に足がついていない、地続きではない場所は自分の場所になりにくいのかもしれない。

渡仏16周目 風邪

12月18日〜24日

12月21日年内最後の授業が終わった。最後の日は朝8:30から始まり、18時30分に終わった。全て対面の授業で、最後の授業は横になって寝たい欲が全面に出ていた。この欲が出る時は大概体調が悪い。案の定、家に帰ると38℃の熱。

友人たちはその日に実家に帰るみたいでそわそわしていた。夕方SNCFからMouvements sociauxの連絡が入る。要するにサボタージュ。友人たちは阿鼻叫喚。バカンスの初日の日常。

22日にガルニエ宮Jiří Kyliánの現代バレエを観に行く。kylianはプラハ出身のバレエダンサーで、現代の最高の振付師のひとり。熱があったが、チケットを数ヶ月前から取っていたため無理して鑑賞。体調が優れず、全4幕のうち2幕で退散。体調が悪い時は感性も弱まる。

渡仏15周目 階級が生まれる瞬間

12月11日〜17日

 今年最後の試験が終わった。それと同時に色々な感情が湧き立つ一週間だった。

 口頭試験は企業のブランドに関するもの。全てのグループが同じテーマを検討し発表した。私のグループはクラスでも優秀な人物が集まった。ひとりは早めの冬のバカンスに入っており、遠隔でレユニオン島からの参加となった。一人が遠隔で、他が対面だと問題が発生する。そのひとつは対面側が話し合っている内容の全てが遠隔側に伝わらないこと。対面側が話し合いをしつつ、彼女が作った資料を添削していると彼女が憤慨。自分の成果物に手を加えられることが我慢できなかったらしい。成果物といっても明らかにChatGPTで作ったであろうという水準のもの。彼女を宥めつつ、しょうがなく彼女の言う通りに資料を戻す。自分の意見を押し通すほどのフランス語能力がまだない。 

準備中、友人の一人が他の班のクラスメートを批判していた。理由はその人たちがグループワークに一切貢献していないから。私も同じグループになって作業をしたことがあるが、確かに貢献していなかった。グループワークの成果は自身の成績に反映されるため、しっかり貢献するクラスメートと組みたいのは理解できる。その反面、働かない人は批判され、学校内ではカーストの下位に位置付けられる。3ヶ月間も経つとクラスの中でカーストが生まれている気がする。そしてフランス以外のフランス語圏の人々への差別が徐々に浮き出てきている。明らかに彼ら彼女らへの言葉遣いや態度が変わってきている。そしてその態度は伝播する。私は唯一のフランス語圏外のクラスメートなのでカーストの外部な気がしている。異邦人なのだ。

 発表中、教授が時計をチラチラみていた。日本の職場で何度か見た光景で、だいたいの場合、話が長いなと思っている。同じ班の人に伝えようかと思ったが、もし早めるように言って、発表の評価が下がったりしたら私のせいにされる雰囲気だったので言わなかった。案の上、発表後に教授から時間管理が甘いと厳しい指摘を受ける。優秀な人物が集まるとそれぞれがしっかり調べ発表するので必然的に長くなる。それを時間内にまとめることができる統率力を持った人物が必要になる。こういった場面に統率を取れるような一段階上のフランス語が必要になってきた。

新しくできた友人とランチに行く。家族経営のイタリアンのお店。友人曰く、このピザはナポリ式のピザらしい。生地は薄め、みみは厚め、一枚が大きい。確かに昔ナポリで食べたピザもこんな感じだった。

息抜きにフィルハーモニーパリを拝聴しに行く。目的はブラームス交響曲四番。3楽章、4楽章が最高に良かった。久しぶりに鳥肌が立つぐらい感動できた。

 週末は疲れ果てて完全に風邪を引いたため家にいた。日本から持ってきた漢方を飲み、ベットで横になりながら本を読む週末だった。

渡仏14周目 模擬裁判の裁判長

12月4日〜10日

 先週に引き続き三つの試験があった。

一つ目は「国際広報」の口頭試験。広告キャンペーンを打つ時、以前はアメリカのスーパーボウルが世界最大の機会だったが、今は中国の春節。30秒ごとのコストは2倍、視聴者は10倍近い。それに合わせて、春節に打つキャンペーンを考え発表した。英語での発表だったのでなかなか骨が折れた。フランス人の英語の発音は本当に独特。フランス語とスペルが同じ英語をフランス語で発音するため脳の切り替えが難しい。

二つ目は「フランスの広報に関する法律」。口頭試験は模擬裁判。私は三人の裁判官のひとりassesseur。被告人prévenuに何個か質問するだけだからなんとかなると思っていた。しかし、全部で三回行う模擬裁判の最後で「裁判長をやってみてください」と先生から提案される。辿々しいフランス語で開廷し、各々の弁護士に順番を振り、被疑者に質問する。なかなか骨の折れる経験だったが、その後に友人から外国人のハンデを抱えつつも裁判長をやる勇気を褒めてもらえた。

三つ目は「ソーシャルメディア戦略」の口頭試験。扱った会社はフランスのE-commerce市場で上位に位置するVinted。フランス版メルカリのような会社。私は他のE-commerceの会社LeboncoinとVintedを比較し、Vintedのターゲット層を明確化し、それを踏まえた提案を行なった。その際に利用したのはメルカリのキャンペーン。有名人のものが買えることや対象商品の購入でポイントがもらえることはフランスでは珍しいらしい。教授から高評価をもらった。

私にとって国際性とは共同目標の達成のために日本の良さをどのように活かせるか考え、目標に合わせて調整すること。藤田嗣治の生き方から学んだ。これが活きた一週間だった。

友人がGuerlainでインターンをしているので行ってみる。ノエルに合わせたディスプレイが秀逸。フランスのセンスの良さが全面に出ていた。Guerlainの香水の匂いは嫌味がなく気に入っている。

週末の本を買うためにSaint-Michel通りに行く。ノエルのお店が出ていた。

渡仏13周目 筆記試験と口頭試験

11月27日〜12月3日

 今週はかなりハードな一週間だった。理由は二つの試験。私の学校は授業評価として筆記試験と口頭試験の2つが課される。筆記試験は個人の知識量を試され、口頭試験ではグループワークを踏まえたプレゼンテーションを行う。

 一つ目は「広報戦略」。宣伝活動に関する方法論の授業。主にSONCASやSpin Sellingの方法を扱った。SONCASはSecurité, Orgueil, Nouveau, Confort, Argent, Sympathieの頭文字をとったもので、顧客に商品やサービスを購入してもらうための方法のひとつ。各段階に関する質問を顧客にし、顧客の求めるものを明確にしていく。Spin Sellingは主にBtoBの際に用いられる。筆記試験はこれらに関するもので、ある質問がどの方法のどの段階に位置づけられるかを理由を含めて答えるもの。口頭試験はVintedに関するもの。Vintedはメルカリフランス版のようなもの。問題はその会社の出現によって、慈善団体に寄付される服の質が下がること。この問題を扱いつつ、慈善団体側からのキャンペーンを作成、発表した。

 二つ目は「国際広告」。フランス以外の広報の仕組みを学ぶもので英語での授業。テスト時にメディアの位置付けに関する問題が出た。筆記試験終了後、友人と話して、そもそものノートが間違っていることが発覚。完全に間違えた。試験の疲労から若干風邪をひく。

帰りにGalaries Lafayetteの前を通る。今年は短冊のようなものが飾られていた。季節外れの七夕。

Cadeaux de Noël のために様々な商品が展示されている。

別な講義を受けに、フランス最大の商業地区La Défenceへ。フランスでは全くみられないビジネス街。ロンドンのような雰囲気と思ったが、友人も同じことを言っていて笑った。

日本にいる間に荷物を預かってくれていた友人へワインを買うためにLe bon marchéへ。

週末は預かってもらっていた荷物を受け取るために友人宅へ。その後に友人と蚤の市に行く。中国や日本のものがあって面白かった。明治初期、海外へ輸出した陶器の装飾のデザインとセンス、色使いは秀逸。

渡仏12周目 試験とChatGPT

11月20日〜26日

 今週は試験勉強と課題に追われた一週間だった。ひとつはRelations Publicsに関する試験。フランスにおけるRPの歴史は意外と遅く、1945年以降にアメリカからフランスに入ってきた。実際に日の目の見たのは1965年にLucien Matratがアテネ法典を作成してかららしい。Carinの論文:https://www.cairn.info/les-relations-publiques--9782100837045-page-27.htmをまとめ、試験に備えた。

 週の後半はAIに関する授業。初日はChat GPTに関する講義。翌日はChat GPTを駆使して、企業とそっくりのサイトを作成するというもの。Chat GPTにHTML, CSS, JSのコードを書いてもらい、VScodeやCodePen上でサイトを作っていく。ちなみに私はコードに関する知識は皆無。Chat GPTが書いたコードをコピーアンドペーストしていく。CodePen上でそれっぽいのが出来上がって、不思議な感覚を覚える。建築方法や耐震の知識が全くないのに、マンションが出来てしまう、そんな感覚。「子供を堕落させる一番方法はほしいものを与えること」。アリストテレスの教育論が脳裏をよぎった。

 RERのC線に乗ってみたら、プチ・トリアノン宮にあるマリーアントワネットの部屋の壁紙が貼られていた。

街はもうNoëlの準備を始めている。

渡仏11周目 初めての病院

11月13日〜19日

 先週の体調不良の理由が分からず、友人から教えてもらった病状AI診断サイトを利用した。質問に答えた結果、急性虫垂炎の疑いがあると診断された。母や甥が虫垂炎を患っており、遺伝的発生を疑った。研究によると30%ほどの遺伝率。急いで病院へ。

 フランスで病院に行くのは初。Doctolibで近くのmédecin généralisteと価格を調べ、予約し病院に行く。医者によっては診察料が約20€も違ったりして驚く。事前に聞かれる医療用語を調べる。虫垂炎appendicite、小腸intestin grêleや大腸gros intestinなど。問診と触診を受け、結果的に虫垂炎ではないと診断される。診断後、かかりつけ医médecin traitantになってほしいとお願いするが、その先生は代理のためなれないと断られた。もう一度、探して予約する必要がある。正直めんどくさい。

 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団がフランスに来ていたため拝聴しに行く。曲目はブラームスのピアノ協奏曲第一番と交響曲第一番。ピアノはHélène Grimaud。正直、ピアノ協奏曲はピアニストの力量不足が目立った。音の表現力が物足りない。アンコールで引いた曲の方が多彩な音で非常によかった。先日聴いたIgor Levitのブラームスのピアノ協奏曲第二番の方がよかった。音の多彩さに関してはLevitに軍配が上がる。交響曲第一番はロンドン・フィルハーモニー管弦楽団の誠実な演奏が心に響いた。第4楽章が秀逸。

 余談だが、先週行ったMusée Bourdelleのおかげで劇場入り口上部のレリーフがBourdelleのものだと気づけた。パリには様々な知識の要素がいたるところに散りばめられている。知識を習得し、実際に見るもの聞くもの経験するものを豊かにする。その場で調べることよりも、自分の記憶を辿り、結びつける。私にとって生きる喜びと感動はここにあると気づく。

 11月の第3木曜日はBeujolais Nouveauの解禁日。Beaujolais NouveauはBeaujolais地区でその年に収穫した葡萄から造られる新酒。ワインと言うと成熟というイメージがあるが、まさにその逆。成熟期間の短さの良さが出ている。赤ワインなのにスパークリングワインのように炭酸の風味がしている。今年は当たり年。授業で教えてもらったBeujolais地区のサイトがよかった。訪れてみたい。https://www.destination-beaujolais.com/

 体調がまだ本調子ではないために土日は家でゆっくりする。以前観たTV5mondeのインタビューを見て気になっていたChristophe Brussetの最新刊Les imposteurs du Bioを読む。以前から化粧品関係のBioが気になっていた。化学製品を使っているのにBio、これは何なのか。この本によると農業関係でBioと認められた製品を用いた化粧品のことを指すらしい。またBioであるが問題のある農業製品もある。そのひとつは輸入輸出の問題。Bioであるが遠くから輸入してる作物。輸送で温室効果ガスを排出したり、本当に環境に配慮しているのか疑問視される。先週あった友人も同じことを指摘していた。