こみなと日記

2023年-2025年 フランス大学院留学

渡仏10周目 体調不良と気晴らし

11月6日〜12日

 体調が優れない一週間だった。先週のバカンスの雰囲気で気が緩んだことに加え、今週の水曜日の授業が21時近くまであり疲労困憊に陥ったことが理由のひとつだと思う。午前中4時間、午後4時間と2時間の計10時間の授業を1日で受けるのは骨が折れる。問題は法律の授業、聞き慣れない語彙が多く40%ぐらいの理解になっている。

気晴らしにMusée Bourdelleに行く。無料で入れる美術館のひとつでBourdelleの作品を鑑賞することができる。Bourdelleの彫刻は国立西洋美術館で見ていたので感慨深かった。「弓を引くヘラクレス」は一長一短で完成した作品ではなく、同じ像を数十体以上を作製し、さまざまな試行錯誤を経て出来上がった作品だった。すぐ成果を欲してしまう自分の浅はかさを反省した。

好きな本屋Gibertに行くついでにLuxembourg公園を散歩する。リュクサンブール公園は現在は元老院が所有している。いつ行っても綺麗な公園。一年前に上海からきた中国人の友人と帰りながら話したことを思い出す。彼女は元気だろうか。

Gibertで2冊の本を購入。ひとつはフランスの代表的思想家Jacques Attaliのメディアに関する書籍。メディアの未来予想の章があり興味を持ったので購入。もうひとつはノーベル賞作家でフランスを代表する小説家Patrick Modianoの新刊La danseuse。帰ってすぐに読み始めた。Modianoの文章は簡潔明瞭なフランス語で、読んでいて気持ちが良い。

ノエルが近い。街がイルミネーションで彩られていく。

渡仏9周目 夏時間の終わり

10月30日〜11月5日

 10月の終わりに夏時間が終わり、日本との時差が7時間から8時間になった。フランス側の時間が1時間戻ることで調整される。毎回、この日に腕時計が1時間ズレて驚く。

 11月1日はLa Toussaint万聖節で祝日。小中高と一部の大学は前後で二週間のバカンスがあるが、私が通うビジネススクールは祝日となるだけでバカンスはない。

 寒くなってきたことに加えてスタージュの断りの連絡を受ける。期待していた反面、心が沈む。送ったCVとLettre de motivationを見返してみると確かに微妙。特にCV。これまでに執筆した論文や研究ノートについても言及していたし資格の欄も不必要だと思う。理由は人事担当者が分からないため。もし私が日本で人事担当者だったとして、フランス人の履歴書にフランスでの資格が書かれた場合分からない。

 もう一度CVを修正する。職業経験の欄を充実させる。厳密に修正を重ねる。書き上がったCVの添削をビジネススクールの担当者にお願いするが、返事がない。仕方がないのでChat GPTに添削してもらう。Chat GPTは添削指示を明確にすると面倒臭がりな下手なネイティブよりも良い添削をしてくれる。

 2日間、まるまるCV添削に費やす。1日目で良いと思ったものも2日目には細かなミスが見つかる。慢心をひとつひとつ潰していく。ぐったりしたのでカフェで休憩。CVが出来上がったので、新たなスタージュ先を探しつつ、2社ほど良さそうな企業があったので、Lettre de Motivationを作って送る。返事がくることを願う。

 週末は観劇。Gustave Eiffelを一人で演じるOne Man Show形式のコメディー。パナマ運河事件や労働者のストライキなどについて言及があり、最初は分からなかった。背景知識が分からない話をフランス語でされると、ついていく力がまだ足りない。

渡仏8周目 9年ぶりのルーブル美術館

10月23日〜29日

今週は多くの人に会った。

まずはカナダにワーキングホリデー制度を利用して留学していた方で初対面。母の高校時代の同級生の娘さんで日本に帰る前に色々な国を回っている。カナダでは半年後学学校に行き、その後に働いたらしい。モントリオールでは仕事が見つけられず、トロントに行ったらしい。理由はトロントは総人口約600万人とされているカナダ最大の都市で仕事が可能性が高いから。外国人が仕事を見つける時、その国の大都市に行くことはどの国も同じ傾向みたい。

フランスは初らしく、ルーブル美術館に一緒に行く。中央の透明なピラミッドから入館した。9年前に初めてルーブルに来た時は並ぶのが嫌で、ルーブル傍の別な入り口から入った。

ルーブルのピラミッドは1989年に完成。当時のフランス大統領フランソワ・ミッテランがパリ大改造計画の一環で推進した。当時は反対意見が飛び交ったが、今となってはパリの象徴のひとつとなりつつある。

会話しながらなので詳しくは観れず。とりあえずモナリザサモトラケのニケを一緒に観る。久しぶりにルーブル美術館に行ってみて、年間パスAmis de Louvreに入会するのも良いと感じた。

午後の授業まで時間があり、クラスメート複数名とカフェに行く。クラスメートと話す良い機会だった。隣に座った友人は大企業でのスタージュの経験を話してくれた。上司からのプレッシャーが強く、精神的に大変だったらしい。フランス人は働かないと言われているが、その言説に疑問を抱かせる話だった。

友人にお茶に誘われて紅茶のカフェに行く。彼女はフランスに長期間いて仕事もしているベテラン。彼女のことを何も知らない人から見ると悠々自適に見えるが、個々人はそれぞれ何かしらの悩みやトラブルを抱えている。みんな何かしら足りない。足りないものより足るを知ることの大事さを痛感する。

週末は国際大学都市の日本館で行われたハロウィンパーティーに参加。日本人の研究者や音楽家たちと交流できた。音楽家たちは練習場所の確保が大変らしい。確かにグランドピアノがある部屋で、かつ音に肝要な隣人を見つけることは難易度が高そう。一方、研究者は業績を積み上げるための論文と博士論文、そして卒業後のポスト探しに必死。こういった話を聞いた時、昔の私なら負けないようにがむしゃらに努力したと思う。しかし、今は自分の目的遂行に対して最小の努力を心がげているため、下手に焦ったりしなくなった。年の功を実感する。

渡仏7週目 プロジェクトマネジメント

10月16日〜22日

今週は3日間、集中的にプロジェクトマネジメントを学んだ。

 テーマはアトラクションパークの建設で、学校側が選んだチームメンバーと共に議論し、プロジェクトを進めていく。メンバーはファイナンスやデータアナリスト、マネジメントなどそれぞれの分野から1名づつ、計7名で構成。午前中の4時間で発表まで持っていく。フランス語で討論するため、なかなかハードだった。リーダーの使用するフランス語は若者言葉が多く、理解できないことがあったため、議論の方向性からずれた発言を度々してしまった。午後はゲームを通して、アトラクションパークの設立の流れを俯瞰的に学ぶ。予算や期限の管理方法が体感できる良い方法だと思う。

二日目はプロジェクトマネジメントの理論的な方法を学ぶ。企画書、タスクリスト、アイゼンハウワーマトリックスガントチャートの効果的な使用法を学び、それを踏まえてレポートを作成。三日目はそのレポートを互いに評価する。ハードな三日間だったが、プロジェクトマネジメント方法を学べる良い授業だった。

葉が散り始めた。本格的に冬が始まる。

 

日々できる限り英語の研鑽に努めているが、スウェーデンが教育におけるデジタル化に警鐘を鳴らしている記事があって興味深かった。研究結果からデジタルでの学習は読解力の低下を招くらしい。

https://www.rarejob.com/lesson/material/wna/2023/10/18/sweden-brings-more-books-and-handwriting-practice-back-to-its-tech-heavy-schools/

ちなみにフランス語はTV5Mondeの学習サイトを利用しており、時間があるときに取り組んでいる。今週はChristophe Brussetへのインタビューが興味深かった。農業大国フランスでは食品に気を使っている人が多く、食品添加物は少ない印象だったが、意外にも2018年は約700種類認可されていた。現在は半数以上減って約320種類となっている。ちなみに日本は香料を含めて約831種類(令和4年10月26日厚生労働省)。

https://apprendre.tv5monde.com/fr/exercice/7676?id_serie=14761&nom_serie=les_derives_de_l_industrie_agroalimentaire&niveau=b1_intermediaire&exercice=1

週末は Théâtre des Variétés に行き、Panique en coulisseを観る。タイトルを日本語訳するなら「舞台裏のドタバタコメディー」といった感じ。Théâtre des Variétésは以前のフランス滞在時に何度か訪れた劇場。40%引きの案内をメールでもらい、12€なら良いかと息抜きで鑑賞。初め案内してもらった席は1階の後ろの方だった。しかし後から前の方に案内してもらい三列目で鑑賞できた。話の内容は、開演間近だが小道具やら何もかもが間に合っていない、それに加えて恋愛絡みで人間関係のトラブルが発生、終始バタバタしたコメディー。なかなか笑えた。

渡仏6週目 スタージュ面接

10月9日〜15日

スタージュの面接関連で忙しない一週間だった。スタージュとはフランス版インターンシップのことで、私のMscのコースは授業の知識と実践に重きを置いているため、1年目は約3月間のスタージュ、2年目は6月間のスタージュが過程修了のために必須。

まずはLinkedInのアカウントを作成。自分の学歴や職歴を入れる。日本と異なるのはアルバイトなどの軽い職歴やスタージュの経歴も記入できること、そしてその経験からどのようなスキルが身についたかを説明すること。フランスでは名刺交換の代わりにLinkedInのID交換をすることがあり、クラスメートは当たり前のようにIDをもっていた。

次にフランスのCVを作成。CVとはラテン語のCurriculum Vitaeの省略で履歴書のこと。日本とは異なりフォーマットは決まっていないので、友人に教えてもらったCanvaで履歴書を作成する。Canvaは無料で利用できる履歴書や資料を作れる優良サイト。MScの応募の際に作成したものを修正する。

木曜日に2つの企業とスタージュについて面接をする。まずCVを渡して、今何を学んでいるのか、職務経験などを聞かれる。驚いた質問はいつからスタージュをしたいですか、何ヶ月間やりたいですかと聞かれたこと。日本だと企業側が決めている場合がほとんどなので、この点は大きな違いだと気づいた。

朝の7時40分に撮影。陽が登るのが遅くなってきた。

 

帰り道、素敵なワイン屋を見つける。お店の人に辛口のワインを探していると尋ねたら、コート・ロワネーズの赤ワインを勧められた。花崗岩granitの影響で風味に特徴があるらしい。フランスは地方によって土壌が異なるため、ワインの風味に違いが出るとのこと。いつか本気でワインの勉強をしてみたい。「バカンス中?どこから来たの?」と聞かれたので「いや。学生で日本から来ました」と答えると日本の漫画の話をしてくれた。特に進撃の巨人が好きらしい。肝心のワインは後味の風味が良いものだった。肉料理と合いそう。

花屋は癒しの場のひとつ。前を通ると花の香りに癒される。秋菊が売られていた。冬が近い。

 

渡仏5週目 授業が始まる

10月2日〜8日

ついに授業が始まった。初日はオリエンテーションで、朝9時にキャンパスに行く。大教室Amphiで行うと事前のメールには書かれていたが、実際の場所がわからず、とりあえずレセプションの人に聞きに行く。同じMScの専攻のクラスメートは60人ほど、フランス語圏以外から来た学生は私だけみたい。60人を3クラスに分け、私はClass 2になる。

午前中のオリエンテーションが終わり、クラスメートと入り口でおしゃべりをする。彼ら彼女らはすでにAlternance先を見つけ、働き始めているらしい。どのように見つけたのか、と尋ねるとHelloWork, Welcome to the Jungle, Indeedがおすすめと教えてもらった。特にWelcome to the Jungleが良いらしい。来週にもCVを書き上げ、添削してもらい、動いていこうと思う。

午後はオリエンテーションの続きをオンラインで行うと言われたため帰宅する。しかし、初のオンライン授業でやり方がわからず、電話を掛けるも誰も出ない。仕方なく再度キャンパスへ向かう。教務に行き、尋ねると、一人で課題に取り組むものらしい。キャンパスで終わらせる。

次の日は8時半から授業が始まる。午前中4時間は「ソーシャルメディア広報」、午後は「広報戦略」の講義。1日6時間の授業はなかなかしんどい。特に午後の「広報戦略」の講義は、広報の戦略のひとつSONCASをふまえたケーススタディの解説だった。

翌日も8時半から講義。ひとつは「国際広報」で英語の授業。もうひとつは「会社のロゴ戦略」の授業でこっちはフランス語。午後は前日の「広報戦略」の授業の続きをオンラインで行う。パソコン上で一人で課題に取り組むものと予想していたが、実際はグループを作って、グループでひとつのキャンペーン戦略を分析せよというもの。対面ならばグループに入れてとお願いできるが、オンラインのためそれも叶わず。急いでオリエンテーションで知り合った友人にお願いし、グループに入れてもらう。3日目にしてハードさを実感する。

怒涛の一週間だったため若干風邪をひく。日本から買ってきた松栄堂の線香を焚き、香りに癒される。

 

渡仏4週目 BootCamp

9月25〜10月1日

BootCampが始まった。BootCampは夏休みの期間や学期が始まる前に短期集中で行われるプログラム。内容は各ビジネススクールや分野によって異なる。私の場合はMSc1のコースのなのか緩めで、オンラインで3日で終わった。主にstageやalternanceの申し込み方法、フランス法に基づく労働契約、労働時間や給料の知識習得。alternance契約は一般の給与所得者と同待遇で働きながら学校に通う労働契約で、学費も会社が払ってくれることになる。ただ注意したいのはEU圏外の場合は、alternance契約で働く場合は労働許可証が必要になること。

余談だが、最初、BootCampって聞いたとき、Billy'sBootcampを思い浮かべてしまった。

BootCampが早めに終わったので、息抜きにパリ管弦楽団のオケを聴きに行く。

プログラムはRichard Straussのヨゼフの伝説とバイオリン協奏曲、César Franckの交響曲ニ短調。バイオリン協奏曲は初めて生で聴いた。プログラムの解説を読んでて知ったのだが、この曲はシュトラウスが18歳の時に作曲したもの。またブラームスに影響を受けた箇所が見られるらしい。

週末の読書はMarie VingtrasのBlizzard。アラスカでブリザードに襲われ息子を見失った主人公をめぐる話。一人称や三人称視点で語られるのではなく、登場人物の各々の視点から物語が語られる群像劇形式。フランス語で群像劇形式は初めて読んだ。語る主体によって使われる文体や語彙が変わる。動詞foutreを使う人物の語彙に馴染みがなく、毎回辞書が必要になった。思ったより時間がかかり3割ぐらいで断念。群像劇形式は避けよう。